遺産分割を先送りした結果・・・

相続が発生したとき、悲しみや混乱の中で遺産分割の話し合いを始めることは大変な負担です。しかし、遺産分割を先送りすることには大きなリスクが潜んでいます。今回は、遺産分割を先送りすることで起こりうる問題と、そのデメリットについて解説します。

遺産分割を先送りすることのリスクとデメリット

  1. 相続税の申告期限を過ぎるリスク
    相続税の申告と納税は、相続開始から10ヶ月以内に行う必要があります。もし遺産分割が完了していない場合でも、法定相続分に基づいて申告を行うことは可能です。しかし、分割が終わっていない財産に対して小規模宅地等の特例などの税制優遇を適用できないことがあります。
  2. 遺産分割協議書を作成せずに放置するリスク
    遺産分割協議が完了していたにも関わらず、正式な『遺産分割協議書』を作成せずに放置していると、いざ登記や財産の名義変更を行おうとしたときに問題が生じます。特に、相続人の一人が亡くなった場合、その相続人の相続人(次の世代)を交えた新たな協議が必要となり、話し合いが複雑化する恐れがあります。
  3. 相続人が亡くなった場合の影響
    相続人の一人が亡くなってしまうと、遺産分割の協議はその人の相続人(子どもや配偶者など)に引き継がれます。これにより、相続人の人数が増え、意見の調整が難しくなる可能性があります。特に、分割協議書を作成せずに放置していた場合、新たに参加する相続人にとっては不透明な部分が多く、不信感を生む原因にもなります。
  4. 10年の期限問題
    令和5年(2023年)の法改正により、遺産分割の請求には10年の時効が設定されました。相続開始から10年以内に遺産分割協議を行わなければ、法定相続分に基づいて分割されることになります。つまり、相続人同士で自由に話し合いをしても、10年を過ぎるとその結果が無効となり、分割協議の意味がなくなってしまうこともあります。
  5. 遺産分割不能に陥るケース
    遺産分割協議が一度まとまっていたにも関わらず、協議書を作成せず、登記も行わないまま放置した場合、後になって相続人の一人が死亡することで協議が再び難航することがあります。相続人の一人が亡くなると、その人の相続人(例:子どもや配偶者)が新たな相続人として参加することになります。このとき、「過去に遺産分割が行われたことは聞いていない」と主張されるケースも少なくありません。
  6. また、遺産分割協議書が作成されていない場合、その協議が実際に行われたことを証明するのは非常に難しくなります。さらに、不動産の名義変更を行おうとしても、亡くなった相続人の相続人全員から印鑑をもらわなければならず、話し合いがまとまらないことが多くなります。この結果、事実上手続きを進めることができなくなることもあります。

遺産分割を先送りしないために

遺産分割は、できるだけ早期に行うことが重要です。以下の点に注意しましょう。

  • 遺産分割協議が整ったら、速やかに協議書を作成し、署名捺印を行う
  • 不動産などの相続登記は、放置せず速やかに行う
  • 相続人全員の合意を確認し、適切な手続きを進める。

遺産分割の先送りは、家族間のトラブルを引き起こす大きな要因となり得ます。問題を未然に防ぐためにも、専門家に相談することをお勧めします。特に、不動産の登記手続きなどは複雑になりやすいため、早めに対応しましょう。

遺産分割を先送りにせず、確実に手続きを行うことで、ご家族の負担を軽減し、トラブルを避けることができます。

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