事業用不動産と遺留分、相続人間の想いを繋いだ解決

2つの土地に分ける

ご相談者: B様 被相続人: B様の父 他の相続人: A様(B様の兄弟)

ご相談の背景

お父様が亡くなり、相続が発生しました。相続人は、ご長男A様とご長女B様の2名です。お父様は事業を営んでおり、相続財産は事業に使用していた土地と建物のみでした。

生前、お父様の介護は主にB様が担っていました。一方、A様はお父様の事業を引き継いでいました。

お父様は、「全財産をBに相続させる」という内容の遺言書を遺されていました。

B様は、「遺言通り全財産を私が相続するのは、事業を継いだ兄(A様)にとって酷だ。兄が事業を継続できるよう、土地と建物は兄に譲りたい。ただ、私のこれまでの貢献や今後の生活もあるので、兄には相応の代償金を支払ってほしい」というお気持ちで、当事務所にご相談に来られました。

問題点と当事者の意向

B様のお気持ちをA様にお伝えしたところ、A様は「父の事業を継いだ自分が土地と建物を受け継ぐのは当然であり、代償金を支払う意思はない」というご意向でした。

このままでは、遺言通りB様が全財産を取得することになりますが、そうなるとA様は事業継続が困難になる可能性があります。一方で、B様のこれまでの貢献や、遺言に込められたお父様の想いを無視することもできません。また、A様には法律上保障された最低限の相続分である「遺留分」を請求する権利があります。

当事務所からのご提案と解決への道筋

当事務所では、B様、A様双方のお気持ちと、法的な権利関係(遺言の有効性、A様の遺留分)を踏まえ、以下の段階的な解決策をB様にご提案しました。

  1. 遺言に基づく相続: まず、遺言書に基づき、B様が土地と建物を相続登記します。これにより、B様の法的な権利を確定させます。
  2. 一部不動産の売却: 相続した土地の一部を分筆(分割)し、事業に直接必要のない部分を第三者に売却します。これにより、B様は当面の生活資金等を確保することができます。
  3. 事業用部分のA様への売却提案: 残った事業に必要な土地と建物を、A様に買い取ってもらうことを提案します。
    • 購入する場合: A様が本来有する遺留分に相当する金額を売買代金から差し引きます。残りの代金については、A様の事業経営に配慮し、長期の分割払いとする条件を提示します。
    • 購入しない場合: A様が購入を希望しない場合は、B様が大家となり、A様に土地建物を賃貸します。その際の賃料と、A様がB様に支払うべき遺留分相当額を相殺していく方法を提案します。

解決結果

B様はこの提案にご納得され、A様に上記内容を伝えました。A様は、事業継続の必要性や、遺留分相当額が考慮されること、分割払いが可能であることなどを検討された結果、③の事業用部分の購入を選択されました。

これにより、B様は遺言の趣旨に沿った財産(売却代金とA様からの分割金)を得ることができ、A様は遺留分相当額の負担を軽減しつつ、事業に必要な不動産を確保して事業を継続できることになりました。相続人間の感情的な対立も解消され、円満な解決に至りました。

ポイント

本件は、遺言の内容と、相続人の現実的な生活や想いが必ずしも一致しない典型的なケースでした。当事務所では、以下の点を重視して解決にあたりました。

  • 相続人双方の想いを尊重: 遺言を尊重しつつも、A様の事業継続、B様の貢献や生活への配慮という、双方の想いを丁寧にヒアリングしました。
  • 法的な権利(遺留分)を考慮: 遺留分という法律上の権利を踏まえ、それを解決プロセスに組み込むことで、公平な解決を目指しました。
  • 具体的な不動産活用と支払い計画: 不動産の一部売却や分筆、売買代金の支払い方法(遺留分との相殺、分割払い)など、具体的で実行可能な計画を提案しました。
  • 段階的な解決策: 一度に全てを解決しようとするのではなく、段階を踏むことで、双方にとって納得しやすい道筋を示しました。

相続問題は、法律的な知識だけでなく、当事者間の感情や将来の生活設計も

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