「相続」には、ドラマのような骨肉の争いをしていることもあり、「争続」なんて言われていることもあります。でも、それと同時に相続が静かに、そして円満に進んでいることも多いのです。
そこには、どんな理由があるのでしょうか?今回は、思わず「優しい世界だ…」と感じてしまうような、揉めない相続によく見られる6つの特徴をご紹介します。もめない相続を知ることで、もめる相続を避けるヒントを得ることができます。
1.相続人がたった一人
これは最もシンプルな理由かもしれません。相続人が一人しかいなければ、遺産を誰とどう分けるか、という話し合い(遺産分割協議)自体が必要ありません。手続きも比較的簡単で、誰かと意見が対立することもありません。まさに「争う相手がいない」状態なので、揉めようがないのです。
(ただし、亡くなった方に借金がないかなど、確認すべき点はありますのでご注意を。)
2.守りたい存在がいる ~ 障害を持つご家族がいるケース ~
ご家族の中に障害を持つ方がいらっしゃる場合、「その人の将来の生活をどう守っていくか」という共通の目標が、相続人たちの心を一つにすることがあります。「誰が面倒を見るか」という押し付け合いではなく、「みんなでどう支えていこうか」という建設的な話し合いになりやすいのです。他の相続人が、そのご家族のために自分の取り分を譲ったり、協力的な姿勢を見せたりすることも少なくありません。家族の絆と優しさが、争いを未然に防ぐのです。
3.分けるものがない ~ 相続財産がない、または借金のみ ~
相続財産がほとんどない、あるいは借金しかない、というケースも、結果的に揉め事になりにくいパターンです。そもそも分けるべきプラスの財産がなければ、争いの種もありません。借金しかない場合は、相続人全員で「相続放棄」の手続きを検討することが多く、むしろ協力して事に当たる必要が出てきます。
(ただし、プラスの財産も借金も、きちんと調査することが大切です。)
4.「ありがとう」がそこにある ~ 介護への感謝とリスペクト ~
亡くなった方の生前の介護や看病を、特定の相続人が献身的に行っていた場合、他の相続人たちがその苦労を理解し、心から感謝していることがあります。このようなケースでは、「お世話になった〇〇さんに多く財産を受け取ってほしい」という気持ちが自然と生まれ、遺産分割がスムーズに進むことが多いのです。法律上の「寄与分」という考え方もありますが、それ以上に、互いを思いやる気持ち、感謝とリスペクトが、円満な相続の潤滑油となります。
5.過去の痛みを知っている ~ 相続トラブルの経験 ~
意外かもしれませんが、相続人自身やその親が、過去に相続で大変な思いをした経験がある場合、それが「揉めない相続」への強い動機になることがあります。「あの時のような思いは二度としたくない」「親が苦労する姿を見てきたから、自分たちは絶対に揉めたくない」という気持ちが、冷静な話し合いや譲り合いの精神につながるのです。過去の痛みから学び、同じ轍を踏まないように努める。これもまた、優しい相続のかたちです。
6.想いが込められた「道しるべ」 ~ 揉めないための相続対策 ~
亡くなった方が、ご自身の死後、残された家族が困らないように、揉めないようにと、生前にしっかりと準備をしてくれていた場合も、相続は穏やかに進みます。
- 誰に何を遺すか、明確な意思を示した遺言書
- 計画的な生前贈与
- 認知症などに備えた家族信託
など、専門家のアドバイスも受けながら、家族への想いを込めて準備された対策は、相続人たちにとって心強い「道しるべ」となります。「お父さん(お母さん)は、私たちのことをここまで考えてくれていたんだな」と感じられれば、その想いを無駄にしたくないという気持ちが、争いを避けさせます。
まとめ
いかがでしたか?「揉めない相続」は、決して特別なことではありません。相続人が一人という物理的な理由もあれば、家族への思いやり、過去からの学び、そして何より、亡くなった方の「残された家族に揉めてほしくない」という強い想いと、それに応えようとする相続人たちの優しさによって実現されます。
相続は、財産だけでなく、家族の想いを受け継ぐ大切な機会でもあります。これから相続を迎える方も、将来のために何かを考えている方も、ぜひ「優しい相続」を目指して、できることから準備を始めてみてはいかがでしょうか。