ご相談の背景(顧客の課題)
ご依頼者様は、長年同居していたお姉様を亡くされ、相続が発生しました。お姉様にはお子様がおらず、相続人はご依頼者様と、既に亡くなっている他の兄弟姉妹のお子様(甥・姪)合わせて5名でした。
ご依頼者様は甥や姪とはほとんど面識がなく、お名前がわかる程度で、連絡先も全く分からない状況でした。遺言書もなかったため、遺産分割協議を進める必要がありましたが、他の相続人との連絡手段がなく、どのように進めればよいか分からず困っていらっしゃいました。
ご依頼者様のご希望(依頼の目的)
ご依頼者様には、以下のご希望がありました。
- ご自宅の相続: 現在住んでいるご自宅は、今後も住み続けたい。
- 預貯金の分配: お姉様の預貯金には、ご依頼者様自身の収入も含まれて管理されていたため、法定相続分(この場合、ご依頼者様は3分の1、甥・姪は各6分の1ずつ)で分割されると、今後の生活に不安がある。ご自身の貢献分や生活状況を考慮し、法定相続分以上の預貯金を取得したい。
これらのご希望を実現するため、他の相続人との遺産分割協議の代理と、円満な解決に向けたサポートをご依頼いただきました。
当事務所の対応と解決(解決)
- 相続人の確定と連絡: まず、戸籍謄本や戸籍の附票を取得し、甥・姪の方々の現在の住所を調査しました。併せて、法務局で「法定相続情報一覧図の写し」を取得し、相続関係を明確にしました。判明した住所宛に、遺産分割協議開始のご提案とご協力をお願いするお手紙を送付しました。
- 相続人の意向確認: お手紙に対し、相続人4名中3名(A,B,C様)から「相続を希望する」旨の返信がありました。残り1名(D様)からはお電話があり、「相続には特にこだわりはなく、皆さんにお任せします」との意向が示されました。
- 遺産分割案の提示と交渉:
- 相続の意向を示された相続人に対し、当事務所から具体的な遺産分割案を提示しました。内容は以下の通りです。
- ご自宅不動産:ご依頼者様が相続する。
- 預貯金:解約後、葬儀費用や相続手続き費用を差し引いた残額のうち、1/2をご依頼者様が取得し、残りの1/2を甥・姪4名で均等(各1/8)に分割する。
- この提案にあたり、ご依頼者様から詳細に聞き取った「長年の同居生活の実態」「ご自身の収入も一体で管理されていた経緯」「生前の介護の状況」「看取りから葬儀・埋葬、その後の法要までご依頼者様が主体的に行ってきた事実」などを丁寧に説明する文書を作成し、分割案の理由として添えました。
- 当初、相続人A,B,C様からは「預貯金の分割案は理解できるが、家は売却して金銭で分けたい」とのご意見が出ました。
- これに対し、ご自宅の現状(昭和40年築の旧耐震基準の建物で市場価値が低いこと、売却時には解体費用が発生する可能性が高いこと、土地の接道状況が悪く買い手がつきにくいことなど)を客観的な資料と共に説明する文章を送付しました。
- さらに、ご依頼者様と相続人A,B,C様との電話協議の機会を設け、直接お話しいただくことで、ご依頼者様の状況や想いを伝え、粘り強く説得を行いました。
- 相続の意向を示された相続人に対し、当事務所から具体的な遺産分割案を提示しました。内容は以下の通りです。
- 合意形成と手続き:
- 説明と説得の結果、相続人A,B,C様はこちらの提案した遺産分割案にご同意くださいました。D様にもその旨を伝え、最終的に全相続人の合意を得ることができました。
- 全相続人に対し、ご依頼者様からの感謝のメッセージを添えた遺産分割協議書(※事案によっては遺産分割証明書形式)を送付し、署名・実印での捺印と印鑑証明書のご返送をお願いしました。
- 書類が揃った後、不動産の名義変更(相続登記)、預貯金の解約手続きを代行しました。
- 解約した預貯金から、立替えていた諸費用(葬儀費用、相続手続き実費等)を精算し、各相続人への最終的な分配金額を計算しました。計算書、費用の領収書等を全相続人に送付し、内容にご確認・ご同意いただいた上で、指定された口座へ分配金を振り込み、全ての手続きを完了しました。
解決の結果(成果の状況)
連絡先の分からない相続人との複雑な状況でしたが、戸籍調査から粘り強い交渉、煩雑な手続きまで一貫してサポートさせていただいた結果、ご依頼者様のご希望通り、ご自宅不動産を単独で相続し、預貯金についても法定相続分以上の分配を受ける内容で、全相続人の円満な合意を取り付けることができました。法定相続分を超える遺産を取得する遺産分割の成功確率は、決して高いものではありませんが、理解を得るための努力をすること、自ら話すことを厭わない依頼者様の熱意が成功の確率を高めることにつながるのだと思います。